「いわゆる「永代供養墓」の現状」<後編>
<前編から続く>
● ニーズは全死亡者数の"5%"~ そのアプローチの方法
- 写真提供:苗木山 南春寺
しかし、現実には、既存の「永代供養墓」の多くが苦戦をしています。それは墓園におけるようなビジネスモデルを確立し得ていないことにあります。墓園の場合、いわゆるサービサーに該当するのは石材店ですが、永代供養墓の場合、その料金(価格)が安価ですので、アプローチに費やす労力は永代供養墓のニーズが集中するであろう、あるいは効率的にニーズを汲み上げられ得るであろうポイントに集約すべきです。
たとえば、葬儀社・互助会などとの提携の他、高齢者が集うNPO法人、高齢者向け施設を運用している社会福祉法人が挙げられます。
前者の場合、いわゆる販売手数料を支払わなくてはならないかもしれませんが、闇雲にチラシを撒いたり、TVのCMを打つよりよほど費用対効果が優れているはずです。
後者の場合、そうした手数料の問題と共に、如何に安価なものも提供することが出来るかがポイントとなるでしょう(ですから、預かった焼骨の管理の仕方などを差別化して、選択肢を拡げなくてはならないでしょう)。そして、多くのNPO法人や社会福祉法人からの利用実績を重ねることが出来れば、それが本事業の公益性を裏付けることともなり、結果、最も「永代供養墓」のニーズや問い合わせが集中する「ポイント」~行政からの協力、行政を通した知名度の向上も見込めるでしょう。それらが、即ち、使用者、使用希望者にとっても安心出来る「永代供養墓」であると言うことが出来ることになります。
いわゆる「永代供養墓」の需要、ニーズが具体的にどの程度見込めるのか、いまだ一般化された方法、実際の検証がなされた方法が提案されてはおりません。ただ、公営の「永代供養墓」の場合、提供されている数とこれに対する応募数(倍率)について公表されていますから、これをひとつの基準とすることが出来るでしょう。
その検証の過程について述べると、本稿の「永代供養墓」の分析がさらに長いものとなってしまいますので、結論から申します。「死亡者の総数のうち5%前後」という値が、いわゆる「永代供養墓」のニーズになると考えてよいでしょう。
ニーズが限られているということは、数が少ないということではありますが、特徴ある「掴み易い」「絞り込み易い」ニーズであるとも言い換えられます。つまり、大掛かりなパブリッシングを想定せずとも、それらを掬い上げるプロセスを組み立てることが可能であるということです。